かなえ：あ、翼せんぱーい！こっちですよー！

翼：かなえちゃーん！ってあれ、幸ちゃんも！

かなえ：外をお散歩してるところを、私が声をかけたんです！

幸：はい。先輩たちがいつも行ってるところ、紹介してくれるって。
真中華お姉ちゃんも寄ってるところなら、行ってみたいなって思ったんです。

翼：なるほどねー。うんうん、そういうことならぜひ一緒に行こう！
それで、かなえちゃんのおススメスポットって、ここでいいの？

かなえ：そうです！東奏の最強オシャレ都会スポット！ショッピングモールですよー！

翼：おー、確かにここ、休日はうちの生徒、結構寄ってるって聞くなー。
器楽部のメンバーも、ここで結構お買い物とかしてるよね。

かなえ：はい！素敵なカフェとかかわいいお洋服屋さんとかがいっぱいの、都会派素敵空間です！

幸：わー、さすがかなえ先輩。大人っぽいです。

かなえ：えへへ！そうですか！？
私もいっぱしのシティーガールですから！こういうところに足を延ばすのです！

翼：かなえちゃんもよくお買い物に来るの？

かなえ：よく来ますけど、お買い物はしません！

幸：あれ……お買い物、しないんですか？
ショッピングモールなのに。

かなえ：ええと……だ、だって、カフェもお洋服屋さんも、なんだか大人っぽすぎて、入りづらいというか……。

翼：あー、その気持ち、ちょっとわかるかも。

かなえ：わかってくれますか？
ですから私は、ここで、大都会の空気を吸って吐くことで、文字通り、都会の空気になじもうとしてるんです。

翼：く、空気になじむって、そういう意味だったっけ？

かなえ：私くらいになると、わかるんですよ。すーはー……
あっ！これ、渋谷の空気だな、みたいな！おお、こっちは原宿だ！みたいな！

翼：多分、それは思い込みじゃないかなあ。

幸：あ、あのリボンかわいいなあ……あの、ちょっとお店の中で見てきてもいいですか？

翼：え？　うん、いいけど……。

幸：ありがとうございます！じゃあ、行ってきます！

かなえ：はー！都会の空気はおいしいですねー！

翼：かなえちゃん、幸ちゃんに先越されちゃってるよー。

翼：えーと、最初のおすすめスポットはそんなわけで、東奏のファッションの中心地、ショッピングモールでした。週末に行くと、リボンを選ぶ幸ちゃんと、深呼吸するかなえちゃんに会えるかもしれませんよー！

翼：はい！　次にご案内する場所はこちら。
東奏の一番の特徴と言ってもいい、湖を中心とした自然公園ですよー。
紹介してくれるのはこのお二人！

菜々美：結城菜々美です！ちょっと緊張してますが、根性で紹介します！

紗彩：いやいや、地元の案内に根性はいらないでしょ。
リラックスリラックス。

翼：ふふふ、いつも仲良しだね、２人とも。

菜々美：えへへ、私たち、親友だから！
ね、紗彩ちゃん！

紗彩：うん、まあね。
そんなはっきり言われると、ちょっと照れるけど……。

翼：ねえねえ、どうしてここがオススメスポットなの？

紗彩：まあ、静かだし、演奏の練習にもちょうどいいしね。
晴れた日に散歩すると気分もいいし。来て損のない場所よね。

翼：へー、２人とも結構ここで練習したりするんだ。

菜々美：うん！前はバラバラに練習してたんだけど、
ある時期から、時々ここで、一緒に！ね！紗彩ちゃん！

紗彩：うん、そうね。ある時期から。

翼：ある時期って？

紗彩：まあ、色々あったのよ。色々あって、ここは私たちの大切な場所ってこと。

菜々美：うん、そういうことなの！

翼：なんだかいいなあ。そういうの。今度練習するとき、私も参加していいかな。

紗彩：もちろん。

菜々美：大歓迎だよ！翼ちゃん！

翼：さて、最後に紹介するのは、ここ、東奏学園旧校舎、第三音楽室。

翼：私たちが部活をしてる場所。

翼：紹介してくれるゲストはいないの。 だって、私が紹介したい場所だから。

翼：旧校舎って、今ではあんまり使われてなくて、
この音楽室も、授業で使われることって、あんまりないんだ。

翼：それを器楽部が、発足した当時、あの手この手で
部室にしたって聞いたよ。

翼：その頃のことは、私にはよくわからないけど。
でもね、ここはもう、私にとっても、思い出の場所。

翼：部活終わりに皆で楽器を片づけてるとき。
誰かが、夕焼けきれいだねーって呟いて、皆、ちょっとだけ手を止めて、窓の外を見る瞬間とか。
お昼ご飯をここで食べて笑い合ったりとか、もちろん普段の、演奏のときとか。色んな、なんでもない時間を過ごしてきたこの場所が、すごく幸せで、大切なんだ。

翼：ここは思い出がたくさん詰まってて、これからも
たくさんたくさん、色んな思い出が詰まっていく場所だと思う。

翼：器楽部以外の人には、おすすめスポットって言いづらいかもしれないけど、でも、器楽部メンバーがオススメするスポットなら、外しちゃいけないって思ったの！

翼：これを読んでる、新入部員候補の君にとってもね、私と同じように、この場所が、特別なオススメスポットになればいいなーなんて。そんな風に思ってるよ！